2019.10.8
私達一人一人には、心の奥深くからの願望があります。私達はその願望によって支えられているのです。
願望がなくては、私達には生きるエネルギーが無くなってしまうのです。
そうした最も心の奥底からの願望には健全なものと、不健全なものがあります。
シッダルタが精神性に生きようと城を出たとき、シッダルタには人々の苦しみを和らげるために、修行して悟りを開くという願いがありました。
シッダルタの願望は健全でした。その願望はシッダルタに修行し、困難を乗り越えて成功するためのエネルギーを与えたのです。
でも誰かを罰したり、富を得たり、他者の犠牲の上に成功しようとする願望は、不健全なものであり、全員に苦悩をもたらします。
私達一人一人が、自分自身の奥底からの願望が健全であるかどうかをよく見つめましょう。
地球保全のために、環境汚染との戦いを助けようとする願望は素晴らしいものです。
でもお金や権力、性欲、名声を追い求めたり、誰かを罰しようとすることは、ただ、いびつで不幸な在り方へと続いていくしかないのです。
そうした願望は、私達を死の方向へと引き寄せて行きます。
この種の意欲が自分の中で浮かび上がった時には、立ち止まって深く省みることが必要です。
この願望の裏には何が隠れているのでしょうか?
そこには私達が蓋をしようとしている、悲しみや孤独は無いでしょうか?
ティク・ナット・ハン
日本語訳・西田佳奈子