ブッダは何一つ養分なしに生き延びることはできないと言いました。これは命あるものの肉体的存在においてだけではなく、心の状態においても真実なのです。
愛が生き延びるためには、養分を与えて、育て養うことを必要とします。そして私たちの苦しみもまた、私たち自身がそれを助長して育むがゆえに、生き延びているのです。
私たちは苦しみや後悔、悲しみを反すうします。噛んでは飲み込み、またそれを持ち出しては、何度も何度もそれを食べているのです。
歩いている間や作業している間、食事している間、あるいは話している間に、私たちは自分の苦しみを養って、自分自身を過去や未来、もしくは現在の心配事の亡霊の犠牲にしてしまい、自分の人生を生きてはいないのです。
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私たちが心の中の痛みから自分自身を切り離す時、私たちはまた、苦しみが貯蔵されている自分の体を捨てばちにしてしまいます。孤独や絶望を感じたら、それを覆い隠そうとして、まるでそんなものが存在しないふりをしてしまうのです。
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それに対する洞察を得て、状況を打開するためには、自分の苦しみを深く見つめる強さと技術のための精神的な実践が必要なのです。
苦しみが湧きあがったら、最初にすべきことは踏みとどまって、自分の呼吸をたどって、その苦しみを認めて受け入れることです。
不快な感情を否定したり、押し殺そうとしようとしてはいけません。
息を吸って
苦しみが そこにある
息を吐いて
私の苦しみよ こんにちは
一回のマインドフルな呼吸をするためには、現実の私たちの心と体、そして意志を必要とします。意識的な呼吸によって、私たちの体と心が再び統合し、今この瞬間へと到達するのです。
マインドフルに息を吸うだけで、私たちには驚くほどの自由がもたらされます。呼吸のたびに、マインドフルネスのエネルギーが生み出されるのです。現在の瞬間において、私たちの心身が一体となり、苦しみがいたわりをもって認められ、受け入れられることを経験するのです。
たった2、3回、自分の注意力を完全に向けた呼吸をするだけで、過去への後悔や悲しみも、そして未来への不安や恐れ、心配も中断することに、あなたはきっと気づくでしょう。
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癒しのプロセスとは、私たちがマインドフルに息を吸う時に始まるのです。
ーティク・ナット・ハン